マッセート[2014]テヌータ・デル・オルネライアMASSETO TENUTA DELL`ORNELLAIA マセト
2013年 NHK朝ドラ「あまちゃん」のワンシーンです。
このシーン、2週にわたって放送されておりました。
何気にエチケットをチラ出ししていたのです。
普通、エチケットはカメラアングルから外れるのですが! しかし、よ〜くみるとMではなく、頭の文字はNでした。
NASSETO なんです。
でも、飲んでいたのはラブルスカ系のブドウジュースでした。
三大ボルゲリと呼ばれる「オルネライア」。
フィレンツェの名門アンティノリが生み出した、スーパータスカンです。
カベルネ・ソーヴィニヨンとメルロのブレンドで造られるオルネライアに対し、メルロのみを使用したもうひとつのオルネライアの伝説的ワインが、マッセートです。
そもそも、ボルゲリと言えば、スーパー・タスカンの聖地とも言える場所。
これらの偉大なワインが、ボルゲリに集中しているのは偶然ではありません。
かつて、このボルゲリの一帯を統治していたのが、ゲラルデスカ侯爵家。
その侯爵家に男系の跡取りがいなくなり、当時の当主であったジュゼッペ氏の二人の娘がアンティノリ家とインチーザ・デッラ・ロケッタ家に嫁ぎました。
インチーザ・デッラ・ロケッタ家は、ボルドーを使用した元祖スーパータスカン「サッシカイア」を、一方、アンティノリ家は、「オルネライア」を生み出します。
つまり、サッシカイアとオルネライアは血縁関係にあり、 設立当初はとくに、サッシカイアからオルネライアへ ワイン造りのアドバイスも行われていたと言います。
オルネライアの誕生は1981年。
「ソライア」や「ティニャネロ」を造ったアンティノリ家の当主ピエロ・アンティノリ氏の弟にあたる、ロドヴィコ・アンティノリ氏は、ワインのセールスのために繰り返しカリフォルニアを訪れており、カリフォルニアでのワイン造りを考え移住しました。
しかし、そこでカリフォルニアワイン造りの重鎮アンドレア・チェリチェフ氏から、故郷ボルゲリの可能性に気付かされ、母から受け継いだボルゲリの土地へ戻ることとなります。
まっさらな土地に、イタリアの伝統品種ではなく、ボルドー品種を植樹し、 オルネライアが誕生しました。
ボルドーブレンドながら、イタリアらしい気軽さと滑らかさを備えたワインは一躍スターダムに昇り詰めます。
そして、オルネライアと同じメルロを100%使用した、このマッセートが誕生しました。
このマッセートの畑のポテンシャルを見抜いたのは、前述のアンドレ・チェリチェフ氏でした。
ロシア出身でアメリカでキャリアを積んだ醸造家であった彼は、カリフォルニアで、ロドヴィコ・アンティノリ氏と出会います。
1980年代初頭、チェリチェフ氏がオルネライアの畑を訪れた際、まるで「ポムロルの土壌にカリフォルニアの気候」という、メルロがその美しさを表現するための夢のような場所であると感じました。
彼の貴重なアドバイスに基づき、オルネライアのチームはその地にメルロを植え、数年後、その夢が実現することとなりました。
いまでこそ、トスカーナ州で育てられるメルロは、優良なワインを生む品種として不動の地位を築いていますが、 その地位を確立させたのは、この「マッセート」であると言っても過言ではありません。
マッセートの畑は僅か6.63ha。
イタリア語でMASSIとは「大きな石」を意味するとおり、片手には余るほどの大きな石が多いのが何よりの特長です。
海抜120メートルの丘の上にあり、標高と土壌の差で大きく3つの種類に区別されています。
「マッセート・セントラル」と呼ばれる畑中心部は、鮮新世時代(500〜200万年前)の粘土質を最も多く含み、この土壌がワインに力強いバックボーンを与えています。
強力で、濃縮したマッセートをマッセートたらしめる個性はこの土壌に由来しています。
標高が最も低い西側に位置する「マッセート・ジュニア」と呼ばれるエリアは、粘土質と砂質の土壌で、瑞々しいブドウが収穫されます。
このブドウは、他のブドウのタンニンの粗さを滑らかにし、ワインに繊細さや滑らかさを与えています。
最も標高が高い「マッセート・アルト」と呼ばれるエリアは、小石と砂を多く含む水はけのよい土壌で、暖かい年には最も早くブドウが熟します。
ここから生まれるブドウはしなやかで穏やかな雰囲気をワインに与えてくれます。
このように、3種のスタイルのブドウがブレンドされることで、奥行きがありバランスの取れた、華々しいマッセートのスタイルが造り上げられています。
伝説的な生産者、オルネライアが手掛けるイタリア最高峰のメルロ。
力強く、官能的な、唯一無二の味わい。
年間を通じて、温暖な地中海性気候はカリフォルニアに良く似ています。
夏は40℃を超えることもありますが、海からの冷気のおかげで、一年中穏やかな陽気が保たれます。
1984年に植樹されたブドウの樹の畝は、夏季の激しい雨に備え、水はけをよくするため、斜面に等高線を描くような向きで植えられています。
これにより適度な水分量を保つ土壌が、果実をゆっくりと成熟させてくれます。
マッセートの畑を見ると、大きな石が転がり、雑草も生えていないむき出しの土壌に、人の背丈ほどの高さのメルロがそそり立つ、一見すると荒々しく厳しい環境。
しかし、この土壌と気候が他にはない個性を持ったメルロを育てています。
2013年を超える高評価のヴィンテージです。
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